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ナレッジの作り方:コールセンターのFAQを作る前に決める、人への動線・元の資料・作る順番

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ナレッジの作り方:コールセンターのFAQを作る前に決める、人への動線・元の資料・作る順番

チャットボットや FAQ を入れることになり、マニュアルも問い合わせのログも手元にある。それでも、どこから手をつければよいか分からない、という声はどの現場でも聞かれます。

最初に持つべき前提は、ナレッジは足りないことを前提に置き、運用まで先に設計することです。そのうえで、人につなぐ動線、正しい資料、作る順番の3つを決めてから書き始めます。

以下、書き始める前に決める5つのことを、コンタクトセンターの支援の現場で使われている判断の基準とあわせて紹介します。

この記事の要点

  • 作り始める前に、AI が答えられないときに人へつなぐ動線を用意します

  • 元の資料は、マニュアル・社内資料 → 対応履歴 → 通話の文字起こしの順に使います

  • 作る順番は、出てくる回数・社内の負担・顧客への影響で決め、回数を最優先にします

ナレッジは揃わない前提で、運用まで先に設計する

ナレッジは、最初に全部を揃えてから公開するものではありません。足りない状態で公開し、足りない分を埋め続けるものとして設計します。

ナレッジがすべて揃うことは、まず無いと考えられるからです。だからこそ、足りない分をどう埋めていくかを、最初に設計しておきます。

海外の調査でも同じ傾向が出ています。

Gartner の調査(2023年12月・顧客5,728名)によると、セルフサービスだけで完全に解決した問題は14%で、解決できなかった理由で最も多いのは、自分の問題に合う情報が見つからなかったこと(43%)でした。

つまり、最初に決めるべきは「何を書くか」より「答えられなかったときにどうするか」です。次の節から、その順に見ていきます。

作り始める前に、AI が答えられないときに人へつなぐ動線を用意する

最初の一歩は QA を書くことではありません。AI が答えられないときに、その場で有人チャットや問い合わせフォームを案内する動線を先に作ります。

<答えられないときの動線>

AI が答えられないとき、動線が無いと「お答えできませんでした」で会話が終わるが、有人チャットや問い合わせフォームを案内すれば顧客は次の行動に進め、人が解決したやり取りがナレッジの材料として残ることを示す前後の比較
図:答えられないときの動線

動線が無いと、チャットボットは「お答えできませんでした」で会話を終えます。顧客は次にどうすればよいか分からず、そのまま離れるか、電話をかけ直します。

顧客の側も、人に相談できる道を求めています。

  • Gartner の調査(2026年2〜3月・顧客3,566名)では、生成 AI で顧客対応をする企業に対し、87%の顧客が人の担当者に相談できる手段を用意することが不可欠と答えました

  • 同じ調査で、チャットボットで悪い体験をした後に、もう一度使ってみようと答えた顧客は27%でした

一度の悪い体験で、次から使われなくなるおそれがあります。動線はナレッジが足りない期間の受け皿でもあります。

人が解決したやり取りが、次のナレッジの材料になる

人への動線は、顧客のためだけのものではありません。ナレッジの材料を集める仕組みでもあります。

チャットボットのログだけでは、顧客が最後に解決できたかどうか分からないことが多くあります。一方で、AI が答えられなかった問い合わせを人が引き取って解決すれば、そのやり取りには正しい答えが残ります。

人が解決したやり取りをナレッジにすれば、次に同じ質問が来たときは AI が答えられるようになります。動線を先に作るほど、この材料が早くたまります。

元の資料は、マニュアル → 対応履歴 → 通話の文字起こしの順に使う

材料は、正しさが確かなものから順に使います。始める前に、どの問い合わせをナレッジにするか、範囲を決めてから集めます。

<元の資料を使う順番>

ナレッジの元の資料は、確認・承認済みのマニュアルと社内資料、実際に解決したやり取りが残る対応履歴、流れは分かるが整理に手間がかかる通話の文字起こしの順に使うことを示すカード
図:元の資料を使う順番

順

元の資料

良いところ

気をつけること

1

マニュアル・社内資料

内容が確認・承認済みで、正しい答えがまとまっていることが多い

版が古いものが混ざる

2

CRM などの対応履歴

顧客の疑問が実際に解決したやり取りが残る

書き方の粒度が人によってばらつく

3

通話の文字起こし

会話の流れが分かる

一目では分かりにくく、整理に手間がかかる

資料がほとんど無い現場もあります。その場合は、過去の問い合わせ履歴から AI で QA のたたき台を作り、担当者が確かめながら直す方法もあります。

資料同士の食い違いは、一覧にして担当部署に決めてもらう

資料を集めると、古い版と新しい版で書いてあることが違う、という場面によく出会います。どちらが正しいかは、ナレッジの担当者ではなく、業務を持つ部署が決めます。

具体例

返品の受付期限が資料によって違う

古い資料には「7日以内」、新しい資料には「8日以内」と書かれている。どちらが今の運用かは、返品の業務を持つ部署にしか決められません。

※ 説明のための例です(数字や設定は例示)

食い違いは一覧にまとめ、業務の担当部署にどちらが正しいか決めてもらいます。決まるまでの論点も、同じ一覧で管理します。

古い情報と新しい情報が両方残っていると、AI も人も、検索したときに間違えた答えを返すおそれがあります。決まった後は、古い方を参照先から外します。

担当部署への確認は、たとえば次のような文面で頼みます。

文例:チャット

送り先〔返品の業務の担当部署〕
〔部署名〕のみなさま

FAQ とチャットボットのナレッジを作っています。資料によって記載が違う箇所があり、正しい方を決めていただけますか。

・項目:〔返品の受付期限〕
・資料A(〔版・日付〕):〔7日以内〕
・資料B(〔版・日付〕):〔8日以内〕

〔日付〕までにお返事をいただけると、公開に間に合います。決まるまでは、この項目はナレッジに載せずにおきます。
〔 〕は自社の内容に置き換えてください

全部を QA にせず、回数・社内の負担・顧客への影響で順番を決める

QA は全部を作る必要はありません。出てくる回数・社内の負担・顧客への影響の3つの軸で作る順番を決め、回数を最優先にします。

<作る順番を決める3つの軸>

QA を作る順番は出てくる回数・社内の負担・顧客への影響の3つの軸で決め、回数を最優先にし、配送日時の変更のような回数の多い問い合わせから作り、ギフト包装の種類のように回数も影響も少ないものは今は作らないことを示す表
図:作る順番を決める3つの軸

社内の負担とは、エスカレーションが起きる、社内で調べるのに時間がかかる、といった手間のことです。回数を最優先にするのは、効果を説明しやすいからです。

回数の多い問い合わせから作ると、工数がどれだけ減ったかを説明しやすくなります。社内でナレッジ作りの時間を確保し続けるには、この説明が要ります。

作らない判断も、同じ軸で決めます。ギフト包装の種類のように回数も影響も少ないものが、その候補です。

チェックリスト

作り始める前の確認

最初は3つの行動から始め、育て続ける

ここまでの5つを一度に完璧にする必要はありません。最初は、人へつなぐ動線を設計する、QA に盛り込む項目と記載順のルールを決める、答えられなかった問い合わせのログを定期的に振り返る、の3つから始めます。

<この記事のまとめ(ナレッジの作り方)>

ナレッジは揃わない前提で、人へつなぐ動線を先に作り、マニュアル・対応履歴・文字起こしの順に資料を使い、食い違いは担当部署に決めてもらい、回数の多い問い合わせから作ることをまとめたスライド
図:この記事のまとめ(ナレッジの作り方)

ナレッジは最初から100点を目指すものではなく、正しい型を作って、日々の運用の中で育て続けるものです。項目と記載順のルールは「FAQの書き方」、振り返りの回し方は「ナレッジ管理の運用」の記事で紹介しています。

よくある質問

Q資料がほとんど無いのですが、どこから始めればよいですか。

A

過去の問い合わせ履歴から AI で QA のたたき台を作り、担当者が確かめながら直す方法があります。

Q優先順位は、回数と影響のどちらを重く見るべきですか。

A

3つの軸のうち、出てくる回数を最優先にします。回数の多い問い合わせから作ると、工数がどれだけ減ったかを説明しやすいためです。

Q古いマニュアルは消してしまってよいですか。

A

食い違いを担当部署に決めてもらった後は、古い情報が残らないようにします。両方残っていると、AI も人も間違えた答えを返すおそれがあります。

中澤 真生(株式会社ギブリー サービスAX事業部 セールスマネージャー)

監修

中澤 真生Mao Nakazawa株式会社ギブリー セールスマネージャー

  • コンタクトセンター
  • カスタマーサポート
  • AI活用コンサルティング

株式会社ギブリーのセールスマネージャー。コンタクトセンター・カスタマーサポート領域で、AIソリューションの提案とAI活用コンサルティングを手がける。2020年にギブリーに参画し、Web接客・LINE・CRM・MAツールの導入支援、営業企画・営業推進を担当。前職はマーケティングツールベンダーで、セールス・カスタマーサクセスとして新規サービスの立ち上げに従事。