導入した企業から聞く3つの声は、止まっている場所がそれぞれ違う
チャットボット・ボイスボットを入れた企業からよく聞く声は、ほぼ次の3つにまとまります。
「チャットボットを入れたが、結局フォームや電話に流れる」
「ボイスボットが用件を聞き取れず、人につながる」
「回答はできても、手続きは人がやっている」
同じ「減らない」でも、1つ目は入口、2つ目は答える段階、3つ目は手続きの段階で止まっています。原因が違えば、打ち手も違います。
止まった問い合わせは、消えずに有人窓口へ戻ります。株式会社リンクの調査(2024年10月・全国の20〜60代500名)では、IVR・ボイスボットなどの無人音声で解決しなかったとき、次に有人窓口へ電話する人が7割を超えました。
詰まりどころは、4つの壁のどれか
解決が途切れる場所は、4つの壁に分けられます。
<自己解決を阻む4つの壁>

壁 | 起きていること | 打ち手の方向 |
|---|---|---|
① たどり着けない | 自己解決の手段があっても顧客が届かず、解決できる用件まで電話・フォームに流れる | 解決の場所と導線(この記事の後半) |
② 答えられない | 答えを持っていないか、参照先や手段が合っていない | 参照範囲と解決手段(「生成AIのカスタマーサポート活用」の記事) |
③ 手続きまで終わらない | 回答はできても、照会・変更・記録が人手に残り、再問い合わせが起きる | 業務完結(「ボイスボットの導入」の記事) |
④ ナレッジが育たない | 未解決のログが放置され、解決できる範囲が広がらない | 改善の回し方(「ナレッジ管理の運用」の記事) |
3つの声を当てはめると、「回答はできても手続きは人がやっている」は③にあたります。有人窓口に来た問い合わせを用件ごとに数え、どの壁で止まったかを分けると、手をつける順番が見えます。
呼量削減の打ち手は、2つの方向に分かれる
ここからは、壁①(たどり着けない)への備えです。その前に、呼量削減の全体像を押さえます。呼量とは、有人の窓口が受ける問い合わせの件数のことです。
<有人対応を減らす2つの方向>

有人対応を減らす打ち手は、問い合わせの発生そのものを減らす方向(商品・サービスの改善・トラブルの削減)と、自己解決率を上げる方向(問い合わせ前の FAQ・ナレッジの拡充、問い合わせ時のボットや IVR による自動化)の2つに分かれます。
4つの壁は、どれも自己解決を上げる側の打ち手です。同じ不具合への問い合わせが続くなら、ナレッジを足すより、商品や業務を直す方に回します。
自己解決を上げる側は、さらに2つの場面に分かれます。
自己解決率は「問い合わせ前」(FAQ・サイト内検索・フォーム前のサジェスト・通知やマイページ)と「問い合わせ時」(チャットボット・ビジュアルIVR・音声案内中の SMS・ボイスボット)の両方で設計します。
この後の振り分けと導線は、この2つの場面に沿っています。
解決の場所は5つ。複雑さ・緊急度・リスクで振り分ける
自己解決の手段は、それぞれ得意な問い合わせが違います。問い合わせごとに、最短で解決できる場所を決めます。
<5つの解決の場所>

解決の場所 | 向く問い合わせ |
|---|---|
FAQ | 営業時間・料金などの確定情報 |
チャットボット | 返品方法などの一般的な手続き |
ビジュアルIVR | 窓口が分からない、電話の前の整理 |
ボイスボット | 契約・予約・配送の変更 |
有人対応 | クレーム・例外・高度な相談 |
ビジュアルIVR とは、電話をかける前に、画面で用件を選んでもらう仕組みです。選んだ用件に合う FAQ や Web の手続きを先に見せ、必要な人だけを電話へ案内します。
振り分けの前提になるのが、AI と人の役割の分け方です。
担い手 | 受け持つこと |
|---|---|
AI | 定型の問い合わせへの回答、照会・予約・変更などの手続き、24時間365日の一次対応と記録 |
人 | 判断や裁量が要る対応、相談・提案・共感が要る接客、例外対応とクレームの解決 |
自己解決率を上げるのは人を減らすためではなく、人が人にしかできない接客へ集中するためです。有人対応を「解決の場所」の1つとして残すのは、このためです。
どこに振り分けるかは、3つの観点で決めます。複雑さ(単純・定型か、複雑・例外的か)、緊急度(今すぐ解決する必要があるか)、感情やリスクの重さ(判断の重要度が高いか)です。
<振り分けの3つの観点>

具体例
3つの問い合わせを振り分ける
「営業時間は?」は3つとも低いので FAQ、「明日の配送時間を変えたい」は緊急度が高いのでボイスボット、「届いた商品が破損していた」は3つとも高いので有人対応に振り分けます。
※ 説明のための例です(数字や設定は例示)
自己解決の導線は、疑問が生まれる画面に置く
解決の場所を決めても、顧客がそこへ届かなければ壁①は残ります。導線は FAQ ページではなく、顧客の疑問が生まれる瞬間の、その画面に置きます。
<疑問が生まれる画面に置く導線>

置き場所は、顧客の行動をたどって決めます。顧客がどの段階にいて、どこで疑問が生まれ、何を知りたいかをたどり、その画面に答えと次の行動を用意します。
たとえば配送待ちで「いつ届く?」と思う顧客には、注文詳細に配送状況・日時変更のボタン・関連 FAQ を置きます。顧客はその場で、答えと手続きの両方にたどり着けます。
有人窓口へ向かった人にも、つながる前に解決の道を示す
問い合わせると決めた顧客にも、まだ自己解決の余地があります。有人窓口につながる前に解決できる道を示し、解決しなかったときだけ用件を引き継いで人へつなぎます。
- 1
フォームの前に関連 FAQ を出す
問い合わせフォームを開いた顧客には、入力内容から関連 FAQ を先に提示します
- 2
電話番号のページにビジュアルIVR を置く
電話番号のページを開いた顧客には、電話の前に画面で用件を選んでもらい、FAQ・Web 手続きへ案内します
- 3
電話の音声案内中に SMS を送る
電話をかけた顧客には、音声案内の間に SMS で Web 手続きや FAQ のリンクを送ります
- 4
チャットはチャットボットが用件を整理する
チャットを開いた顧客には、チャットボットが用件を整理し、回答・手続きへ案内します
チェックリスト
壁と振り分けの確認
<この記事のまとめ(問い合わせが減らない理由と振り分け)>

よくある質問
Qチャットボットを入れ替えれば、問い合わせは減りますか。
壁は4つあり、1か所だけを自動化しても有人対応は減りにくいため、まずどの壁で止まっているかを確かめます。
QボイスボットとビジュアルIVR は、どう使い分けますか。
ビジュアルIVR は窓口が分からないときの電話の前の整理に、ボイスボットは契約・予約・配送の変更のような手続きに向きます。
Q電話の件数を減らしたいのですが、まず何をすればよいですか。
電話番号のページにビジュアルIVR を置き、電話の前に画面で用件を選んでもらって、FAQ・Web 手続きへ案内します。解決しなかった人だけを人へつなぎます。




