お客様事例

「ここに聞けば解決できる」西武グループの従業員総合窓口へ

PoCで年間約350時間の対応工数削減見込み。グループ約50社への利用拡大に向け推進中

西武プロセスイノベーションの福田南氏、笠原拓児氏、辰巳修氏(左から)

株式会社西武プロセスイノベーション様

  • DX・BPRユニット ジェネラルマネジャー 辰巳 修 様
  • DX・BPRユニット マネジャー 笠原 拓児 様
  • DX・BPRユニット アシスタントマネジャー 福田 南 様

  • DECA チャットボット

西武グループ各社のバックオフィス業務を支える株式会社西武プロセスイノベーション(以下、SPI)。同社では、電話・メール・チャットなど複数のチャネルに分散していた従業員からの問い合わせを一つのチャネルに集約し、「ここに聞けば解決できる」従業員総合窓口の実現を目指しています。

その構想を形にするため、SPIはDECAを活用し、チャットボットと有人チャットを組み合わせた従業員向け問い合わせサービス「社内コンシェルジュ S-Chat(エス・チャット)」を構築。「ここに聞けば解決できる」従業員総合窓口の実現に向け、西武グループへの横展開を段階的に進めています。2025年には、西武グループへの横展開を見据え、2社3業務を対象としたPoCを実施。4つの検証観点である、「回答品質・有効性」「UI・導線」「ナレッジ運用性」「他社・他業務への展開性」を、実運用を見据えて検証しました。

PoCでは、3業務の試算を合計すると、年間約350時間の問い合わせ対応工数を削減できる可能性が見込まれました。検証後は本格運用へ進み、2026年9月には利用対象を7社へ拡大。現在は、西武グループ各社に共通する問い合わせへの回答を中心に運用し、今後は会社ごとの制度や運用の違いにも対応できるよう、個社別の回答整備を段階的に進めていく方針です。

本記事では、SPIがなぜギブリー/DECAを選び、どのように従業員総合窓口を設計・構築し、回答品質を高めていったのかを紹介します。さらに、PoCで得られた成果、実運用で見えてきた次のテーマ、今後の西武グループへの展開について伺いました。

本事例のポイント

  • 西武グループ全体の従業員総合窓口を見据え、FAQ・AI・有人対応を組み合わせ、従業員の自己解決と適切な窓口への接続を両立。
  • 2社3業務のPoCで、実データと100問を超える想定質問を用いて、回答品質、ナレッジ運用、有人対応への導線、他社・他業務へ展開できる構造を検証。
  • PoCでは、3業務の試算を合計すると、年間約350時間の問い合わせ対応工数を削減できる可能性が見込めた。
  • 2社での先行利用を経て、2026年9月に利用対象を7社へ拡大。共通回答を基盤に、グループ各社固有の制度・運用への対応を段階的に推進。
  • 今後、問合せ対象業務や対象会社の拡充を図り、従業員総合窓口の実現を目指す。

対談者

  • 株式会社西武プロセスイノベーション DX・BPRユニット ジェネラルマネジャー 辰巳 修 氏
  • 株式会社西武プロセスイノベーション DX・BPRユニット マネジャー 笠原 拓児 氏
  • 株式会社西武プロセスイノベーション DX・BPRユニット アシスタントマネジャー 福田 南 氏
  • 株式会社ギブリー MarketingDX部門 ServiceAX事業部 CXソリューション 三井 基容大 氏

1. 西武グループ各社のバックオフィスを支えるSPI。DX・BPRユニットが担う変革

――まず、SPIとDX・BPRユニットがそれぞれ担っている役割について教えてください。

福田氏:SPIは、西武グループ各社のコーポレート業務を受託し、業務の集約・標準化・効率化を進めるシェアードサービス会社です。経理・出納、給与計算、社会保険などの手続き、会員組織の運営などを担っています。

その中でDX・BPRユニットは、SPIのDX支援、全社的なAI利活用支援、全社横断型BPRの推進を担っています。今回の従業員総合窓口の取り組みも、こうした業務変革の一環として進めています。

取材に応じる福田南氏

2. 問い合わせ対応の負荷と複数会社・複数制度をまたぐ難しさ

――従業員からの問い合わせ対応には、どのような課題や難しさがあったのでしょうか。

辰巳氏:各業務ユニットが固定電話やメール、チャットなどで個別に問い合わせに対応していました。問い合わせが入るたびに担当者が業務を中断して対応することもあり、日々の業務負荷になっていました。

また、問い合わせの量だけではなく、複数の会社や制度にまたがる問い合わせを扱うこと自体にも難しさがありました。FAQやマニュアルがあっても必要な情報を探しづらく、問い合わせ履歴や回答ノウハウも十分に集約されていませんでした。そのため、過去の問い合わせ対応で得た知見を、別の従業員の自己解決や回答品質の向上に生かしにくい状態でした。

さらに、システムが共通であっても、会社によって運用や処理方法が異なる部分があります。同じような問い合わせでも、会社や雇用区分によって適用される制度や規定が異なる場合もあり、情報を一か所に集めるだけでは、必ずしも正しい回答を返せるわけではありません。問い合わせる従業員に応じて、適切な情報を返せることが必要でした。

――そうした課題への取り組みを本格化した背景を教えてください。

辰巳氏:受託する会社や業務を今後広げていくのであれば、その前に自分たちの問い合わせ対応を効率化しておかなければならない、という問題意識が強くなりました。個別対応に時間を使い続ける状態のままでは、受託範囲が広がるほど負荷も増えてしまいます。

そこで2025年から、グループ各社への展開も見据え、従業員総合窓口の検討を本格化しました。

取材に応じる辰巳修氏

3. 「ここに聞けば解決できる」を目指し、チャットボット・FAQ・有人対応を一つの窓口へ

――課題を受けて、どのような従業員総合窓口を目指したのでしょうか。

辰巳氏:目指したのは、問い合わせが特定の担当者に集中しない状態です。まずは従業員総合窓口に相談することで、自分で解決できる。チャットボット・FAQで解決できない場合でも、有人対応につながる。従業員が「どこに聞けばよいのか」を探さずに済む状態にしたいと考えました。

また、問い合わせログを蓄積し、FAQやナレッジの改善に活用していくことも構想に含まれています。

まずはグループ各社に共通する問い合わせへの回答を中心に整備し、今後は会社ごとに異なる制度や運用への対応も段階的に進めていく方針です。

4. グループ展開を見据えたパートナーとして、ギブリー/DECAを選んだ理由

――従業員総合窓口を実現するパートナーとして、なぜギブリー/DECAを選んだのでしょうか。

福田氏:まず挙げたいのは、チャットボットの選択肢と内容に応じて回答を表示させる構築が柔軟にできる点です。他社の提案と比較しても独自性が高く自由度が高いと感じました。回答精度だけでなく、今後、対象会社や業務を広げていく際の汎用性も魅力でした。

辰巳氏:加えて評価したのが、AIの使い方です。すべてをAIに任せるのではなく、定型的な問い合わせにはあらかじめ用意した回答を返し、AIが必要な問い合わせにはAIを使う。そうした使い分けによって、正確性と柔軟性のバランスを取っている点が、私たちの考え方に合っていました。

他社の提案には、AIによる回答に寄りすぎているものや、反対にAI活用が十分ではないと感じるものもありました。その中で、定型回答とAI回答を組み合わせるDECAの提案は、バランスがよいと感じました。

福田氏:また、他社での導入実績があったことも安心材料になり、ギブリーの支援・バックアップ体制も含めて総合的に判断しました。

5. PoCで、「展開できる窓口」を検証。設計・構築・改善を反復

① まずは2社3業務から。回答品質だけでなく、使いやすさや運用まで検証

PoCでは、西武ホールディングスと西武プロセスイノベーションの2社を対象に、「厚生業務」「コーポレートカード」「経費精算」の3業務で検証を実施しました。

――対象を絞ることで、どのような点を見極めようとしたのでしょうか。

福田氏:まず確認したかったのは、回答精度です。それに加えて、実際の従業員が使う際のUIや、どのような流れが使いやすいのかも見極める必要がありました。いきなり広く展開するのではなく、まずは小さく始めて、利用者の感想や意見を聞きながら改善していく方がよいと考えました。

PoCでは、主に次の4つの観点から検証しました。

1.チャットボットでどの程度自己解決につなげられるか

2.従業員が使いやすいUI・導線になっているか

3.FAQ更新やナレッジ管理を無理なく継続できるか

4.他の業務や会社へ展開できる仕組みになっているか

回答品質だけでなく、従業員が利用する体験や運用開始後のメンテナンス、将来的な横展開まで含めて確認しました。

② 実データをもとに、横展開を見据えたナレッジと問い合わせ導線を設計

過去の問い合わせ履歴やFAQ、制度資料などを棚卸しし、厚生業務のボットを中心に、コーポレートカード・経費精算を含む検証環境を構築しました。

FAQやナレッジ記事を整備するだけでなく、カテゴリや階層、ボットの分岐、企業選択、ページ導線、解決できない場合の有人対応への導線なども設計。アカウントや権限といった運用要件についても整理しました。

特に意識したのが、将来の横展開です。対象となる会社や業務が増えても管理が複雑にならないよう、ボットの作り方やナレッジの格納方法を初期段階から整理しました。

SPI側でもPoCを通じて、回答精度を高めるには、資料をそのまま格納するだけではなく、ナレッジを細かく分類し、どこから何を参照させるかまで設計する必要があることが分かってきました。

③ 100問を超える想定質問で、ナレッジとプロンプトを繰り返し調整

――回答品質を高めるうえで、ギブリー側ではどのような点を重視したのでしょうか。

三井氏:利用者が質問したときに、意図に沿わない回答が返ってしまうと、利用体験そのものを悪くしてしまいます。そのため、実際にありそうな質問を入力し、どのような回答が返るのかを確認しながら調整することを重視しました。

そこで、100問を超える想定質問を用意し、実際の問い合わせに近い質問を使って回答を繰り返し検証しました。

回答が適切に出ない場合には、単にナレッジを追加するだけではありません。ナレッジ本文の書き方や参照先を見直したり、AIが必要な情報を捉えやすいようプロンプトを調整したりと、細かなチューニングを重ねました。

三井氏:ただ、私たちだけでは、その回答が業務上正しいかどうかまでは判断できません。そこはSPIの皆さまにも確認いただきながら、一緒に回答品質を高めていきました。

取材に応じる三井基容大氏

SPI側では、業務ごとに回答内容を確認できるメンバーが業務上の正誤をチェック。ギブリー側では回答精度をランク付けし、特に確認が必要な回答から優先してレビューできるようにすることで、現場の確認負荷を抑えながら改善を進めました。

④ AIに任せきらず、頻出・定型的な質問には固定回答を活用

回答品質を高めるうえでは、すべての問い合わせをAIに回答させるのではなく、頻出する質問や定型的に回答できるものは固定回答とし、AIでの回答が必要な問い合わせにAIを使う構成としました。

SPIでは、現時点ではコストを過度に優先するのではなく、まず実現したいことを形にすることを重視しています。一方でギブリー側は、AIによる誤回答のリスクに加え、利用対象が拡大した際の生成AI利用コストも考慮。過去の問い合わせを確認しながら、よくある質問は固定回答として用意するなど、必要以上にAI生成へ依存しない設計を進めました。

6. PoCで本格運用への見通し。3業務で年間約350時間の工数削減可能性を試算

PoCでは、厚生業務を中心にフィードバックと改善を重ねながら、2社3業務の検証を実施しました。

問い合わせ対応工数の削減効果を試算した結果、厚生業務では年間57〜100時間、コーポレートカードでは6.3時間、経費精算では285時間の削減可能性を確認。3業務の下限値を合計すると、年間約350時間の問い合わせ対応工数を削減できる可能性が見えてきました。

回答品質についても、正確性・完全性・実用性・わかりやすさ・簡潔性・自己解決支援度・エスカレーション適切性の7項目を、それぞれ5点満点で評価する基準を設定。工数削減効果だけではなく、「どの程度の問い合わせに回答できるか」と「その回答の質は十分か」の両面から検証しました。

厚生業務では、過去の問い合わせ106件のうち103件に一次回答できるナレッジカバー率97.2%を記録し、回答品質も29.5点/35点となりました。フィードバックを受けながら修正を繰り返したことで、3業務の中でも高いカバー率と品質を確認できました。

一方、コーポレートカードはナレッジカバー率45.9%、回答品質26.7点/35点となりました。初期投入後に十分な改善を加えていない状態での検証だったため、37件中20件が回答不能となりましたが、回答できたナレッジ自体の品質は一定の水準を確保していました。今後、不足しているナレッジを補完し、厚生業務と同様に検証と修正を重ねることで、カバー率を高められる余地も見えています。

このように、 異なる結果が出たことで、ナレッジを増やすだけではなく、実際の回答を評価しながら不足する情報を補い、内容を継続的に改善していくことの重要性も確認できました。PoC後は、ナレッジの誤記や未対応項目の解消、PDCAプロセスの整理などを進めながら、厚生業務を起点に本格実装し、他の業務や対象企業へ段階的に広げていく方針が整理されました。

――PoCを経て、実際の回答品質をどう感じましたか。

笠原氏:私は途中からプロジェクトに参加し、導入直前の段階でAIの回答を試しました。さまざまな質問をしてみましたが、確認した範囲では正確に回答してくれたため、一定の精度が確保されていると感じました。

取材に応じる笠原拓児氏

7. チャットボットを導入するだけでは足りない。実運用を支えたギブリーの伴走支援

――PoCを通じて、チャットボットを実際の業務で使える状態にするうえで、どのようなことが重要だと感じましたか。

福田氏:導入前に想像していた以上に、回答精度を高めるためにはナレッジの持ち方が重要だと分かりました。単に資料を登録すればよいわけではなく、どの情報をどこから参照させるのかを細かく整理し、実際の回答を確認しながら改善していく必要があります。

その部分では、三井さん(ギブリー)にかなり支援してもらいました。想定質問や不足しているナレッジの整理、回答が適切に出ない場合のナレッジの修正やプロンプト調整など、細かなところまで対応してもらっています。最初から期待はしていましたが、サポートについては想像以上だったと感じています。

ギブリーさんが回答結果を確認し、改善が必要な箇所を整理する一方で、SPI側の業務担当者がその回答が業務上正しいかを判断する。こうした役割分担で改善を繰り返したことで、PoCを単なるチャットボットの検証で終わらせず、本格運用へ進むための回答品質や運用の土台を整えることができました。PoCの結果、厚生業務を起点に実装フェーズへ進む判断材料も揃っています。

――今後、SPI側でも継続的に運用・改善していくために、どのようなことが必要だと考えていますか。

福田氏:一方で、これまでかなりギブリーさんにお任せしてきた部分も多くあります。実際に取り組んでみて、回答品質を高めるためには、ナレッジの作り方や裏側の設定にも細かな工夫が必要だと分かりました。今後、長く運用していくためには、SPI側でもそうした仕組みを理解し、一緒に学びながら自分たちで運用できる範囲を広げていく必要があると考えています。

8. 7社展開は通過点。「ここに聞けば解決できる」窓口を西武グループ全体へ

2026年9月には、S-Chatの利用対象を7社へ拡大。現在は本格運用と並行しながら、利用状況を確認し、改善を進めるフェーズに入っています。

――利用対象を広げる中で、さらに利用を定着させるために、どのような点を改善していきたいですか。

福田氏:まずは、「S-Chatで何を質問できるのか」を知ってもらうことです。ポータルにリンクを設置するなど、利用者からの入り口を増やしていますが、存在や使い方が十分に伝わっていない部分があります。コンテンツを増やすだけでなく、利用を促すための周知も同時に進めなければなりません。

先行利用で得られた声からも、回答精度だけでなく、「何を質問できるのか」の分かりやすさや、解決できなかった場合に次の窓口へ迷わず進める導線など、問い合わせ体験全体を改善していく必要性が見えてきました。

――今後、この従業員総合窓口をどこまで発展させたいと考えていますか。

笠原氏:SPIが受託している業務を対象に、利用できる会社や問い合わせ範囲を広げていきたいです。

最終的には、西武グループの従業員が問い合わせ先を意識せず、一つの場所で必要な情報にたどり着ける状態にしたいですね。

さらに将来的には、問い合わせへの回答にとどまらず、その先の手続きまでつなげる構想もあります。

笠原氏:AIエージェントのような仕組みと社内システムをつなぎ、質問に答えるだけでなく、そのまま手続きまで進められるようにしたいです。たとえば、パスワードの再発行を自動化したり、社内データを参照して個別の問い合わせに対応したりできればと考えています。

SPIが目指すのは、単にチャットボットの利用範囲を広げることではありません。2社3業務のPoCで培ったナレッジの整理・評価・改善の方法を生かしながら、従業員が問い合わせ先を探さなくても、必要な情報や対応につながる従業員総合窓口を、西武グループへ段階的に広げていくことです。

辰巳氏:まだ、ようやくスタートラインに立ったところです。コンテンツも対象者も、認知も、これから広げていかなければなりません。スピード感を持って改善を続けていきたいと思っています。

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株式会社西武プロセスイノベーション

SPIは、西武グループ各社のコーポレート業務を受託し、業務の集約・標準化・効率化を進めるシェアードサービス会社です。経理・出納、給与計算、社会保険などの手続き、会員組織の運営などを担っています。

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  • DX・BPRユニット ジェネラルマネジャー

    辰巳 修様

  • DX・BPRユニット マネジャー

    笠原 拓児様

  • DX・BPRユニット アシスタントマネジャー

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